泉質の特徴と通称
解説の対象
泉質の解説は、分析書に記載された泉質名を対象とし、成分表に確認できる値があれば説明に反映しています。微量成分が含まれることだけを理由に、泉質名や通称を追加していません。
泉質名に含まれない成分
掲載する成分の条件
メタケイ酸・メタホウ酸・遊離二酸化炭素など、泉質名に含まれない成分は、分析表の記載値が温泉法の当該成分の基準値以上の場合にサマリーへ掲載します。これはサイトの掲載目安です。単独で対応する基準値がない成分は、追加紹介の対象にしません。すでに泉質名に基づく説明がある成分は重複して紹介しません。
限界値と成分の区別
「0.1未満」は0.1含まれるという意味ではなく、0.1より少ないという意味です。このように上限だけを示す値や、記載のない値は、含有量が確定しているものとして紹介しません。メタケイ酸イオン、鉄(Ⅲ)イオンや総鉄など、異なる成分・集計値は区別しています。
鉄の掲載条件と色づき
鉄の追加解説は、総鉄の記載値、または鉄(Ⅱ)単独の記載値が、温泉法の総鉄の成分基準値以上の場合に掲載します。鉄(Ⅱ)だけの場合は確認できた量が基準値以上であることを掲載の目安とし、総鉄量への置き換えや総鉄基準に対する倍率表示は行いません。これはサイトの掲載方針で、色が付く境界値ではありません。色づきは「赤茶色に変わることがあります」と可能性として説明します。基準未満や限界値の鉄も成分表には保持します。
成分の一般的な特徴
メタケイ酸は自治体の温泉紹介で保湿成分として紹介されることがあります。メタホウ酸はホウ素を含み、温泉法の成分基準にも挙げられる成分です。遊離二酸化炭素は泡、遊離硫化水素はにおい、鉄(Ⅱ)イオンは酸化による色づきとの関係を説明します。含有量だけから浴槽での見え方や美容効果の強さを判断したり、新たな泉質名・通称を付けたりするものではありません。
通称と感じ方
「美人の湯」「傷の湯」などは、一般的・歴史的な通称の紹介です。美容上の変化や、病気・けがへの効果を保証するものではありません。肌ざわりや刺激、においの感じ方には個人差があり、浴槽の温度や温泉の利用方法によっても変わります。
数値による分類
pH・源泉温度・溶存物質量の分類は公的な基準に基づきます。源泉温度は、実際に入る浴槽の温度とは異なる場合があります。
泉質ごとの肌ざわり
肌ざわりの説明は泉質ごとに分けています。アルカリ性単純温泉やナトリウムを主な陽イオンとする炭酸水素塩泉では、皮脂や古い角質を落としやすい性質を紹介します。塩化物泉では水分や熱を逃しにくくする性質、ナトリウム・カルシウム・マグネシウムを特徴とする硫酸塩泉では、しっとり感や保温に関わる一般的な性質を紹介します。肌への効果の強さを含有量から算出したり、微量成分の存在だけで洗浄・保湿効果を判断したりするものではありません。
単位の換算とミリバルの計算値
表示単位と原本の保存
読み比べやすいように、サマリーと成分の合計欄はmg/kgで表示しています。原本の数値・単位・化学式は保存しています。
ミリバルは、イオンを電気の量で比べる単位
イオンは、プラスまたはマイナスの電気を帯びた成分です。陽イオンはプラス、陰イオンはマイナスの成分を指します。mg/kgが「重さ」を示すのに対し、ミリバルはイオンが持つ「電気の量」をもとに比べるための単位です。同じ重さでも、成分の種類によってミリバルの値は異なります。
ミリバルの換算方法
ミリバルは原本の記載値を優先します。未記載の場合は、イオンの種類と含有量が確認できるものに限り、次の式で換算し、表の下に計算値であることを注記します。
ミリバル(mval/kg)=含有量(mg/kg)÷式量×イオンの価数(絶対値)
式量は成分をつくる原子の重さから求める数値、価数はイオンが帯びる電気の数です。「絶対値」は、プラス・マイナスの符号を外して数だけを使うという意味です。
ミリバル%と合計の計算
ミリバル%は、陽イオンの中、または陰イオンの中で、その成分がどれだけの割合を占めるかを示します。たとえば、陽イオン全体が10 mval/kg、ナトリウムが8 mval/kgなら、ナトリウムのミリバル%は80%です。重さの割合である質量%とは異なります。
ミリバル%は、陽イオン・陰イオンそれぞれについて、各成分のミリバルを合計で割り100を掛けて求めます。同じ表に載っている全成分のミリバルが分かる場合のみ計算します。計算値は小数第2位まで表示するため、表示された割合の合計が100%にならない場合があります。ミリバルの合計も、全成分の値が分かる場合に計算します。表示用に桁数を揃える前の値を合計してから、小数第2位まで表示します。
計算できない値と原本の優先
「0.1未満」のように正確な量が分からない値、未記載の値、イオンの種類が特定できない値は計算せず「―」と表示します。原本にある値を計算値で上書きすることはありません。
基準値に近い成分の紹介
温泉法と療養泉の基準値との比較
温泉法の基準値は温泉に該当するかを判断する条件、療養泉の基準値は療養泉に該当するかを判断する条件です。療養泉は、温泉のうち温度や成分が所定の条件を満たすものを指します。サマリーの倍率は、分析表の含有量をそれぞれの基準値で割って求めます。基準値の記載があるものだけを表示し、桁数を揃えて表示する場合は「約」を付けます。たとえば基準値が50 mg/kgで含有量が100 mg/kgなら、2倍です。倍率は効能の強さを表すものではありません。また、一つの成分が基準未満でも、源泉温度など別の要件で温泉・療養泉に該当する場合があります。鉄(Ⅱ)を総鉄、遊離硫化水素の質量を総硫黄として比較することはありません。
紹介する範囲
「基準値と比べて見たい成分」では、療養泉の成分ごとの含有量基準と比べ、記載値が80%以上・100%未満のものを紹介しています。この掲載範囲はサイト独自の目安で、公的な分類ではありません。
比較する成分と総量
総鉄と鉄(Ⅱ)、総硫黄と遊離硫化水素は区別します。鉄(Ⅱ)だけの比較など、総量が確認できない場合はその旨を併記し、基準未満とは断定しません。
比率と療養泉の判断
成分量の比率は効能の強さを示しません。また、源泉温度など別の要件で療養泉に該当することもあるため、ある成分が基準未満であることから、温泉全体を「療養泉ではない」と判断するものではありません。
適応症の参考情報の意味
「基準を満たした場合の参考」は、該当する泉質に分類される場合の浴用の泉質別適応症です。現在の基準未満の成分に同じ効果があることや、基準に達すると効果が生じることを意味しません。
禁忌症・適応症の参考情報
掲載する情報の範囲
禁忌症は入浴を避けるべき病気や状態、適応症は温泉療養の対象として挙げられる症状などを指します。このページでは、環境省の掲示基準に基づく入浴(浴用)の参考情報として紹介します。施設掲示の転記とは分けて掲載し、飲用の適応症は含めていません。
利用時に確認すること
利用時は現地の最新の掲示をご確認ください。
参照資料
泉質の分類と含有量の基準
- 環境省「鉱泉分析法指針(平成26年改訂)」:泉質・液性・源泉温度などの分類。
- 環境省「温泉の定義」:療養泉の成分ごとの含有量基準(表2)。
泉質の特徴・通称・肌ざわり
- 環境省「温泉利用のいろは」:泉質の特徴と利用時の参考情報。
- 日本温泉協会「温泉の泉質のいろいろ」:泉質の特徴。
- 日本温泉協会「温泉の色」:鉄の酸化などと温泉の色づき。
- 日本秘湯を守る会「温泉の種類・泉質」:泉質の特徴と通称。
- 北海道立衛生研究所「北海道の温泉」:硫酸塩泉と陽イオンの組み合わせ。
- 環境省「温泉の保護と利用に関する外国語表記の手引き」:炭酸水素塩泉・塩化物泉・硫酸塩泉の性質の説明。
- 日本温泉協会「温泉の医学的効果とその科学的根拠とは!?」:アルカリ性のお湯と肌ざわりの解説。
- 島根県「シマネスク117・美肌県しまねの絶景温泉」:メタケイ酸を保湿成分として紹介する自治体の説明。
禁忌症・適応症
- 環境省「禁忌症及び入浴又は飲用上の注意の掲示等の基準」:平成26年7月1日改訂の浴用の禁忌症・適応症。
単位換算と原子量
- 神奈川県温泉地学研究所「室内での試験結果」:ミリバルの換算式。
- CIAAW「Abridged Standard Atomic Weights 2024」:換算に用いる原子量。