泉温による4つの分類

鉱泉分析法指針では、湧出時の温度で次の4つに分類します。成分の濃さやpHとは別の分類です。[1]

源泉温度による分類
分類源泉の温度
冷鉱泉25℃未満
低温泉25℃以上34℃未満
温泉34℃以上42℃未満
高温泉42℃以上

25℃は低温泉、34℃は温泉、42℃は高温泉に含まれます。分類名は、そのまま入浴できる温度や、効果の強さを示すものではありません。

温泉法の「温泉」と、温度分類の「温泉」

温泉法では、源泉から採取されるときの温度が25℃以上、または所定の成分が基準を満たすことなどが温泉の要件です。25℃未満でも、成分の要件を満たす温泉があります。[2]

一方、上の表の「温泉」は34℃以上42℃未満という温度区分の名称です。同じ言葉でも、法律上の定義と温度区分では対象が異なります。

温泉法・療養泉の基準を詳しく読む

源泉温度と、実際に入る浴槽温度

高温泉でも、浴槽は温度調整される

源泉から浴槽までの移動や貯湯の間に温度が変化するほか、施設で冷却・加水・加温する場合もあります。源泉が高温泉であることだけで、浴槽も42℃以上と判断することはできません。

加温・冷却・加水は区別して確認する

加温は熱を加えること、冷却は温度を下げること、加水は水を加えることです。冷却の方法は加水だけとは限りません。利用状況の掲示で、実施の有無や理由を確認します。記載がない項目を「行っていない」とは扱いません。

具体例1:下呂温泉・水明館 — 水を加えて温度調整

岐阜県下呂市の水明館では、高温の源泉を入浴に適した温度に調整するため、水道水を加えると案内しています。水を加えて冷ます「加水」の例です。加水の有無だけで温泉の良し悪しを決めるのではなく、実施する理由と合わせて読みます。[3]

具体例2:草津・湯畑草菴 — 注ぐ湯量で温度調整

群馬県草津町の湯畑草菴では、湯畑源泉を引き込み、湯口から出る湯量の調整で浴槽の温度を保つと案内しています。水を加えるのではなく、浴槽へ入る温泉の量を調節する方法です。[4]

具体例3:伊東・陽気館 — 温度の違う源泉を混ぜて調整

静岡県伊東市の陽気館では、源泉温度が低い大浴場のお湯に、露天風呂に使う温度の高い源泉を少量混ぜて湯温を調整すると案内しています。温泉以外の水を加える方法とは異なり、別の源泉を組み合わせる例です。混合後の泉質や分析値を読む際も、どの源泉・採水場所の資料かを確認します。[5]

具体例4:伊豆長岡温泉京急ホテル — 熱交換器で冷却

静岡県伊豆の国市の伊豆長岡温泉京急ホテルでは、加水せずに源泉の温度を下げるため、熱交換器を使用しています。二重構造の管に高温の源泉と冷却水を別々に通し、水を混ぜずに熱を移して冷やす仕組みです。源泉に水を加える方法とは異なり、管を隔てて熱だけを移します。[6]

具体例5:しんとろの湯 — 長い木の樋を流して自然冷却

宮城県大崎市のしんとろの湯では、合計約200mの木の樋(とい)に源泉を流し、その間に自然冷却してから浴室へ送る方法が案内されています。水を加えて温度を下げる方法とは異なり、流れる道のりを利用して冷ましています。[7]

しんとろの湯の分析書を見る

具体例6:別府・渋の湯 — 竹枝を伝わせて冷却

大分県別府市・鉄輪温泉の渋の湯では、竹製の冷却装置「湯雨竹(ゆめたけ)」を利用しています。高温の温泉を竹枝に伝わせ、落ちていく間に冷やす仕組みです。長い水路を通すしんとろの湯とは、冷ますための構造が異なります。[8]

具体例7:北海道・豊平峡温泉 — 水車を通して自然冷却

札幌市の豊平峡温泉では、汲み上げた温泉を水車に通して冷まし、湯温を調整すると案内しています。木の樋や竹製装置のほかにも、水車を利用する方法があります。[9]

具体例8:草津温泉の湯もみ — 板でお湯をかき混ぜて冷ます

群馬県草津町では、熱い源泉を水で薄めずに冷ますため、長い板でお湯をかき混ぜる「湯もみ」が伝えられています。流路や機械の工夫とは異なり、人がお湯を動かして温度を下げる伝統的な方法です。熱乃湯では、その歴史と湯もみの実演を紹介しています。[10]

このように、冷却には水を加える以外にも、流路や装置を工夫する方法があります。「冷却している」という説明だけで加水の有無を判断せず、具体的な方法を確認すると、施設ごとの違いが分かります。

分析書で確認すること

泉温を読むときの確認項目
項目確認すること
測定場所源泉・混合槽・利用施設など、どこで測った温度か。
測定日分析終了日とは別に、現地調査の日付も確認する。
測定項目「気温」や試験室の測定条件を泉温と取り違えない。
施設の利用状況浴槽の温度や、加水・加温などの掲示も確認する。

このサイトのサマリーでは、確認できる泉温の数値から温度区分を案内しています。原本の泉質・分類欄の記載は別に保持し、測定場所や資料の記載も合わせて紹介します。

実際の温泉分析書を探す

参考資料

  1. 環境省「鉱泉分析法指針(平成26年改訂)」:温度による分類。
  2. 環境省「温泉の定義」:温泉法・療養泉の温度と成分基準。
  3. 下呂温泉 水明館公式サイト「温泉」:温度調整のための加水。
  4. 湯畑草菴公式サイト「温泉」:湯量による浴槽温度の調整。
  5. 陽気館公式サイト「よくある質問・入浴、お風呂編」:異なる源泉を混ぜる温度調整。
  6. 伊豆長岡温泉京急ホテル公式サイト「源泉100%かけ流しの贅沢湯」:源泉と冷却水を混ぜない熱交換器による冷却。
  7. しんとろの湯公式サイト「温泉」:約200mの木の樋による自然冷却。
  8. 別府鉄輪温泉 渋の湯公式サイト:竹製冷却装置「湯雨竹」による温度調節。
  9. 豊平峡温泉公式サイト「温泉」:水車を経由する自然冷却。
  10. 草津温泉 熱乃湯公式サイト「湯もみの歴史」:水を加えずに湯を冷ます伝統的な方法。