成分を読むときに押さえたい3つの基本

泉質名は温泉の分類を、成分表は個々の成分の量を知る手がかりです。泉質名にない成分も分析表には記載されますが、含まれることと、そのお湯の見た目や肌ざわりの特徴になることは分けて読みます。[1]

「泉質」は、温泉に含まれる成分の種類や量による分類です。「源泉」は温泉が湧き出るもとを指し、源泉の測定値と、実際に入る浴槽の状態は区別して読みます。

  1. 泉質名で、温泉全体の分類を確認する

    最初に泉質欄を確認します。泉質の名称と、酸性・アルカリ性、高温泉などの分類は区別して読みます。成分表で見つけた微量成分から、新しい泉質名を付けることはしません。

  2. 成分名・単位・不等号を一緒に読む

    mg/kgは、温泉水1kgあたりの含有量です。名前が似た成分でも別項目の場合があります。また、「0.1未満」は0.1含まれるという意味ではありません。数字だけを取り出さず、項目名と記載方法も確認します。

  3. 同じ成分・同じ単位の基準値と比較する

    温泉法と療養泉では基準値が異なる成分があります。たとえば総鉄は鉄(Ⅱ)と鉄(Ⅲ)を合わせた量です。鉄(Ⅱ)だけが記載されている場合、その値を総鉄量として扱うことはできません。基準がどの成分・合計量を指すのかも確認します。

ミリバルや計算値の扱いは、成分表の単位換算とミリバルの読み方で詳しく説明しています。

10種類の泉質から、温泉の特徴を知る

泉質名は、温泉全体の成分の組み合わせを表す分類です。まず泉質の記事で全体像をつかみ、気になる成分は成分ごとの記事で詳しく確認できます。

泉質名が長いのは、特徴が組み合わさっているため

たとえば「ナトリウム-塩化物・硫酸塩泉」は、陽イオンのナトリウムに加え、塩化物と硫酸塩の特徴を併せて読む名前です。下の分類から複数の記事を読んで、分析書の泉質名と照らし合わせてみてください。

気になる特徴から探す

成分名がまだ分からない場合は、気になっている話題から解説を選べます。いずれも一般的な性質の説明で、個別の温泉の色・泡・美容効果を保証するものではありません。

成分ごとの特徴と、分析書での読み方

各記事では、成分の性質、基準値、分析書で間違えやすい点を整理しています。記事の中には、その成分の記載がある分析書へのリンクもあります。

  • メタケイ酸

    温泉の紹介で保湿成分として見かけるメタケイ酸。紹介される性質と、分類に使う基準値を分けて理解することが大切です。

    • 「保湿成分」として紹介される背景
    • メタケイ酸イオンとの区別と、含有量の読み方
    メタケイ酸の特徴と分析書の読み方
  • メタホウ酸

    メタホウ酸は、温泉法の成分基準に挙げられる項目の一つです。成分が記載されている意味を、分析値と基準値の関係から読み解きます。

    • 分析書で使われる表記と、メタホウ酸イオンとの違い
    • 効能を付け加えず、含有量を基準値と比較する方法
    メタホウ酸の特徴と分析書の読み方
  • 総鉄イオン

    鉄を含む温泉は、酸化によって赤茶色に変わることがあります。ただし、微量の鉄が記載されているだけで、浴槽の色まで決まるわけではありません。

    • 総鉄・鉄(Ⅱ)・鉄(Ⅲ)の違い
    • 色づきの可能性と、知覚試験の記載を読むときの注意
    総鉄イオンの特徴と分析書の読み方
  • 遊離二酸化炭素

    遊離二酸化炭素は、お湯に溶けているガス成分です。泡との関係を見るには、含有量だけでなく加温などによる変化にも目を向けます。

    • 遊離炭酸という表記と、炭酸水素イオンとの違い
    • 泡との関係と、温泉法・療養泉で異なる基準値
    遊離二酸化炭素の特徴と分析書の読み方

温泉法と療養泉では、基準値が異なる

温泉法の基準は温泉の定義に、療養泉の基準は療養泉の分類に使われます。温度またはいずれかの成分が基準を満たす仕組みなので、すべての成分が基準以上である必要はありません。[2]

温度・成分の基準値一覧

数値はいずれも「以上」です。成分量は温泉水1kgあたり、温度は源泉から採取されるときの値です。「—」は、その区分の個別成分基準がない項目です。

温泉法・療養泉の温度と全成分の基準値
項目温泉法療養泉
源泉温度25 ℃25 ℃
溶存物質(ガス性のものを除く)1,000 mg/kg1,000 mg/kg
遊離二酸化炭素250 mg/kg1,000 mg/kg
リチウムイオン1 mg/kg—
ストロンチウムイオン10 mg/kg—
バリウムイオン5 mg/kg—
総鉄イオン10 mg/kg20 mg/kg
マンガン(Ⅱ)イオン10 mg/kg—
水素イオン1 mg/kg1 mg/kg
臭化物イオン5 mg/kg—
よう化物イオン1 mg/kg10 mg/kg
フッ化物イオン2 mg/kg—
ヒ酸水素イオン1.3 mg/kg—
メタ亜ひ酸1 mg/kg—
総硫黄1 mg/kg2 mg/kg
メタホウ酸5 mg/kg—
メタケイ酸50 mg/kg—
炭酸水素ナトリウム340 mg/kg—
ラドン74 Bq/kg111 Bq/kg
ラジウム塩(Raとして)0.00000001 mg/kg—

総鉄・総硫黄の扱いやラドンの単位換算については、温泉法・療養泉の成分基準で詳しく説明しています。基準値との倍率は、泡や色が現れる境界や、効果の倍率を示すものではありません。

実際の分析書で確かめる

成分の記事を読んだら、末尾の「関連する分析書」から実際の記載を見てみてください。同じ成分でも、含有量やほかの成分との組み合わせは異なります。

数値と、色・においの記録を読み比べる

成分表に鉄があっても、知覚試験では無色と記載されている場合があります。数値と知覚試験は、それぞれ異なる情報を記録しています。分析日や採水場所も確認し、現在の浴槽の状態と同じものと決めつけずに読みます。[3]

登録されている温泉分析書を探す

泉質・温泉成分の読み方で、よくある疑問

成分が多いほど、効果も強くなりますか?

このサイトでは、含有量から効果の強さを判断しません。温泉法・療養泉の基準値との比較は分類の目安であり、美容効果や入浴による変化を点数化するものではありません。泉質の特徴と通称の扱いもご確認ください。

成分表にはあるのに、サマリーに出ないのはなぜですか?

泉質名に基づく解説とは別に、成分を追加紹介する枠では、温泉法の当該成分の基準値以上を確認できることを掲載目安にしています。基準未満の値や「0.1未満」のように量の上限だけが分かる値も、成分表には残しています。詳しくは泉質名に含まれない成分の掲載方針をご覧ください。

基準未満の成分があると、温泉ではないのですか?

その成分だけでは判断できません。温度や別の成分で基準を満たす場合があるためです。判定の条件は温泉・療養泉の基準の読み方で確認できます。

参考資料

  1. 日本温泉協会「温泉分析書の見方」:分析項目、単位、記載内容の読み方。
  2. 環境省「温泉の定義」表1・表2:温泉法・療養泉の温度と成分基準。
  3. 日本温泉協会「温泉の色」:成分の変化と色づき。

各成分についての詳しい出典は、それぞれの解説記事にも掲載しています。