硫黄泉の特徴

硫黄泉の特徴となる成分は一つではありません。硫黄を含む次のような成分が、お湯に溶けています。[1]

  • 硫化水素イオン
  • チオ硫酸イオン
  • 遊離硫化水素

それぞれの量や組み合わせは、温泉によって異なります。

硫黄泉の2つの型と、においの読み方

硫黄泉には、硫黄成分がどのような形で含まれるかによって、次の2つの型があります。[5]

硫黄泉の2つの型
型特徴
硫黄型硫黄成分が、主に遊離硫化水素以外の形で含まれるもの。
硫化水素型硫黄成分が、主に遊離硫化水素の形で含まれるもの。

硫黄成分が主に遊離硫化水素として含まれる場合は、泉質名に「(硫化水素型)」と付けて区別します。

卵を思わせるにおいのもとは硫化水素です。実際にどのようなにおいが確認されたかを知るには、色やにおいなどを確かめる「知覚試験」の記録が参考になります。成分表の「遊離硫化水素」の量と合わせて確認すると、その温泉の特徴を読み取りやすくなります。

具体例:しんとろの湯の分析書を読む

しんとろの湯の平成27年の分析書では、泉質名に「含硫黄」とあり、硫化水素イオン14.4 mg/kg、遊離硫化水素0.5 mg/kgが別々の欄に記載されています。知覚的試験にも「微かに硫化水素臭を放ち」とあります。このように、泉質名・成分量・においの記録を合わせると、その温泉の特徴を読み取りやすくなります。0.5 mg/kgは遊離硫化水素の量であり、総硫黄量そのものではありません。

しんとろの湯の成分表と知覚試験を見る

ここでは泉質の一般的な特徴を紹介しています。個々の温泉の色・におい・肌ざわりや、入浴による効果を保証するものではありません。

分類と基準の読み方

総硫黄と遊離硫化水素は、同じ数値ではありません。総硫黄の基準と比較するときに、遊離硫化水素の含有量をそのまま代用しないようにします。

分類に関わる成分の基準

総硫黄:療養泉の成分基準値は2 mg/kg以上です。[2]

温泉法の基準値と比較する

このサイトでは、分析書に記載された泉質名を紹介します。成分表の数値だけから、新たな泉質名を付け加えることはしません。複数の特徴が併記される泉質名もあります。

分析書で確認すること

硫酸イオンは、総硫黄の分類で数える成分とは別です。「硫酸塩泉」と「硫黄泉」を区別し、泉質別の禁忌症については施設の掲示も確認してください。

泉質名・液性・利用状況を分けて読む

泉質名に加えて、pH・源泉温度・分析日と、加水や加温などの利用状況も確認します。源泉の分析値が、そのまま現在の浴槽の状態を表すとは限りません。

禁忌症・適応症は浴用の参考情報として

禁忌症は入浴を避けるべき病気や状態、適応症は温泉療養の対象として挙げられる症状などを指します。適応症に書かれていても、入浴で病気が治るという保証ではありません。全ての泉質に共通する情報と、その泉質に固有の情報があるため、実際の利用時には現地の掲示も確認してください。[3] 禁忌症・適応症の読み方

硫黄泉の判定方法

ここからは、分類の仕組みを詳しく知りたい方に向けた説明です。

硫黄泉の判定に使う「総硫黄」とは

硫黄を含む成分があるだけで、硫黄泉と呼ばれるわけではありません。硫黄泉に分類する際は、対象となる成分に含まれる硫黄の合計量である「総硫黄」が、基準値を満たすかを確認します。[2]

総硫黄は、硫化水素イオン・チオ硫酸イオン・遊離硫化水素の3つの成分に含まれる「硫黄だけの重さ」を合計したものです。

ところが、これらの成分には、硫黄以外の元素も含まれています。たとえば遊離硫化水素の化学式を見ると、水素も含まれていることが分かります。

遊離硫化水素の化学式

H₂S

Hは水素、Sは硫黄を表します。H₂Sは、水素原子2個と硫黄原子1個からできています。成分全体の重さには水素の分も含まれるため、総硫黄を求めるときは、硫黄(S)の分だけを数えます。

そのため、分析書に書かれた各成分の含有量を、硫黄だけの重さに換算してから合計します。

ただし、硫酸イオンは対象に含めません。

硫黄型・硫化水素型を分ける条件

型の判定には、成分の量を同じ単位に揃えて比較します。判定式と数値例は、専門記事で説明しています。

詳しく読む:硫黄型・硫化水素型の判定条件

硫黄泉の分析書

泉質名にこの分類を含む温泉を掲載しています。詳しい泉質や成分量は、各施設の分析書で確認できます。

参考資料

  1. 日本温泉協会「温泉の泉質のいろいろ」:10種類の泉質と分類、旧泉質名。
  2. 環境省「温泉の定義」:温泉法・療養泉の温度と成分基準。
  3. 環境省「温泉利用のいろは」:入浴の参考情報と注意事項。
  4. 日本秘湯を守る会「温泉の種類・泉質」:塩化物泉・重曹泉の一般的な特徴と通称。
  5. 環境省「鉱泉分析法指針(平成26年改訂)」:硫黄泉の型と泉質名の付け方。